よくプロショップや大型チェーン店のバイヤーさん(商品の買い付け担当者さん)から「どこのグローブの生産工場の品質が良いのかねぇ?」なんて聞かれることがあります。現在、グローブ生産工場は国内に約20社、海外に約8社あります。同じブランドのグローブでも何ヶ所かの工場で作られていることがあり、工場によって大きく「型」がちがうのです。経験を積んだバイヤーさんになると、ブランドでなく生産工場のチェックまでしないとダメだということに気付いているのです。「どこのグローブの生産工場の品質が良いのか?」この解答をこの場でしても何の意味もありませんので、代わりに良いグローブの型の見極め方をグローブの写真を通してご紹介したいと思います。代表的なポイントを上げていますので、このポイントに該当する項目がひとつでもあればおすすめできないと考えて下さい。
これもすべて私の、50年におよぶ野球グローブ人生から得たことを基にコメントしてあります。これがあなたと良いグローブの出会いになり、「守備の達人」の道をばく進していただくきっかけになれば、グローブ職人としてこんなにうれしいことはありません。
1:グローブにバランス感覚があるか?
このバランス感覚とは、前にも触れた「耐球骨格」を有しているかということです。震度7の激震は軽くいなしても、すぐに元に戻れるかということです。このバランスはグローブに手を入れグローブを閉じてみればわかります。捕球するときのイメージで、親指と何指が正対するか確認してください。
硬式・軟式であれば
| 外野手のあなたなら |
オールラウンダーをめざすなら |
内野手のあなたなら |
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ソフトボールであれば
| 外野手のあなたなら |
オールラウンダーをめざすなら |
内野手のあなたなら |
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このバランス感覚の目安になる親指と○指が正対するか?という点は、私が歩んできたグローブ人生50年の間に大きく変わりました。以前は今日よりもっともっと人指し指よりだったのです。しかし近代野球のすさまじい進化により打球の速さ・強さは格段に向上しました。その打球を逃さず受け止めるためにはグローブの親指強度を向上させることが最善の方法です。そこで当社は業界の先陣をきって親指革命を開発し、親指強度を格段に向上させる事に成功しました。親指が安定し、自由に動かせるようになった結果、その正対する指はすこしずつ小指側へとシフトしています。このシフトで、まず捕球面が大きく確保され(たとえ普段は全て使わなくても〉、型崩れも回避できるようになりました。「道具はまず親指から」という親指の重要性を証明している事例です。
2:グローブの硬くすべきところは硬く、柔らかくすべきところは柔らかいか、そして関節はあるか?
全体が硬い仕上げのグローブで見分けるのは難しいのですが、何とか5本指と手の平の神経を集中させてチェックしてください。
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赤の斜線部分が十分に硬く補強されているか確認してください。ここがはじめから頼りないレベルであればメリハリがつかず、使えば使うほど不安を感じるでしょう。
3指(人指し・中・薬)も図のように硬さのバランスが違います。
3指の指先も「いざ!」という時、重要ですのでチェックを忘れずに。
Aの土手部はほどよく硬くです。硬すぎも良くありません。 |
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柔らかさ=関節の見極めが大事です。関節を有していなければ、いつまで経っても握力トレーニンググローブになってしまいます。チェックは慎重に!!
C’のラインは小指側のフレックスライン(このラインに沿って曲げる)です。ここに関節があるか?元々硬いグローブでもかすかに感じ取れるか?Cは特に柔らかさが必要です。
Aは親指の関節です。昨今は捕球時、親指を積極的に動かすため、柔らかさが必要です。A’は親指側のフレックスライン
Bは極端に柔らかい関節は必要ありませんが、人間の背骨付近にあたる部分ですので、「ねばり強さと柔らかさ」が必要です。 |
この硬くすべきところは硬く、柔らかくすべきところは柔らかくという課題を、型紙(パターン)のみで実現することはなかなか困難です。当社ではこの課題に対し、「関節を損なわずに硬くすべきところを硬く」できる特殊構造版を開発し、グローブに内蔵することで対応しています。
ここぞというときには硬さを発揮し、自然体でというときにはしなやかに対応してくれる。そんなメリハリの利くグローブかどうかの見極めが重要です。
3:グローブの「おなか」が極端に出ていないか?
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2のチェックと同時にこのポイントも是非確認してください。「おなか」、つまり中指と薬指の指又あたりがグローブを閉じようとするときに極端に膨らんでしまうものは良くありません。これは捕球部と背面部のパーツのバランスが悪いと発生します。買われたときはほんの少しの出っ張り程度だったものでも、使い込んでいけば2倍、3倍にもなりますので要注意です。こうなるとグローブを閉じるときに捕球部とグローブの指先が連動せずチグハグな感じになります。良い型に育ってきたなと思う頃に型崩れを起こす原因のひとつです。現在のグローブの構造上、全く出っ張らないものはありません。それを理解した上でよく比較し、ご自分の指先にあった、出っ張りにくいものを選んでください。 |
4:ポケットの「たまり」の位置は?サイズは?
1で触れたバランス感覚は良くても、ポケットの「たまり」の位置・サイズがおかしいグローブは多いです。
これから説明するポイントが達成されていなければ「使えば使うほど味が出る」グローブにはなりませんので要注意です。
ソフトボールはボールが大きいので、わかりずらく恐縮ですが、硬式・軟式グローブの場合はプレイヤー自身が捕球を繰り返しながらポケットの「たまり」の位置設定をする事が型作りする上で重要です。ここでいう「たまり」とは、プレイヤー自身が最終的に自分の手・捕り方に合った「型」に仕上げていく前段階の地ならしの場所のことで、どこを一番深く耕しておくか(何処をポケットにしたいか)を示しています。この「たまり」が適正であればプレー時のなじみ、型付けがスムーズになります。
そのポイントは以下の通りです。
| 外野手のあなたなら |
オールラウンダーをめざすなら |
内野手のあなたなら |
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はポケットを表しています。一番大きな円から一番小さな円に向かって少しずつ深くなっていきます。ちょうど地図で山の高低をあらわす線と同じだと思ってください。
一口に内野、外野といっても、それぞれのポジション、捕球の仕方などによってポケットの位置には個人差がでます。特に内野手に関しては、その個人差が強いです。その個人差を大別すると、上の写真のように、内野手のポケット位置は、横広に分布し、外野手のポケット位置は、縦広に分布しています。オールラウンダーはその中間といえるでしょう。
ポケットのサイズは使用するボールより少し大きめであるか?ポジション別では外野・オールラウンド・内野の順にポケットが大きくなっていきます。しかし特に軟式の場合、ポケットが大きすぎるとボールがはねやすくなりますので、注意してください。
この「たまり」の状態、わかりにくいのですが、良く見るとちゃんと設定されているグローブはありますよ。この技術はかなり高度なものですし、又見極めるのも少し訓練が必要かと思います。
5:グローブは立っていますか?立つ為の条件はそろっていますか?
グローブが立っている寝ているという表現を業界では良く使います。
立っていればボールを正面から受け止めやすく、寝ていればボールを横から捕らざるを得ません。
立っているグローブは、人指し指の状態に特長があります。
- グローブの背骨として、中心に人指し指が配置されている
- 正面からグローブを見て、人指し指がほぼひねられずに正面を向いてつけられている
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人指し指を全くひねらずにつけることは強度的な問題があり、多少ひねることを計算して設計しております。しかし、
図Bのように大きくひねっているものは結果的に、ボールを正面から捕れない横捕りのグローブになってしまいます。この型ですと使いこんでいくうちに親指が寝てしまい、ポケットも狭くなりどうしようもなくなります。
この状態のグローブを業界では「せんべい」と言います
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| A:ほぼひねられずに正面を向いている |
B:ひねられてついている |
特にソフトボールでは使用ボールが大きく、より正面からボールを受け止めることが必要ですので、人差し指のつき方は重要です。当社の「極め捕り2REV.」は人指し指を正面に向かせることに成功した最新モデルです。
「立っていない」状態のグローブを、いまだにプロ野球や高校野球のプレーヤーが使っているのをテレビで見かけます。
グローブが「立っていること」は、近代野球において非常に重要なポイントですので必ずチェックしてください。
以上、5つのポイントを挙げてみました。是非「良い型」探しの参考にしていただければ幸いです。
この内容を理解した上で店に行き、改めて色々なグローブを見てください。これらの条件をクリアしているのは30%くらいしかないことがおわかりになれば、あなたの、グローブを見る目はかなりハイレベルだと思います。また、その条件をクリアしていないグローブはどうなりそうか、そのグローブでプレーしたらどうなりそうか想像してみてください。昔のグローブをとりだして、見てみるのも勉強になると思います。
全くグローブに関係ない話で恐縮ですが、日本が今輸入再開しようとしているアメリカ産牛肉は、実に5年以上も前からヨーロッパで輸入禁止になっていると聞きました。ヨーロッパの検査によればアメリカ産牛肉は人間が食するに値しない「有害物質」(急速に大きく育てるため、牛に与えられる大量のホルモン剤)が含まれているらしいのです。今まで私は「店で販売されているのだから大丈夫」と安易に買い物していましたが、この話を聞いたときはビックリしました。考えてみると、意外と何の分野でもそうなのかもしれません。「完成品グローブ型付けのウソとホント」でも話しましたが、買う側が商品を見極めなくてはいけない時代なのです。グローブに関しても市場に出回っているものの70%は「悪い型のグローブ」です。しっかり見極めてください。
私が今までグローブと共に歩んできた50年の道のり。しっかり見極めた上で選んでいただけるグローブを作ってきたと自負しております。そしてまだまだ続く今後のグローブ人生もそうありたいものです。
今回、本社(サクライ貿易)からグローブの「型」について書いてくれと言われ、私なりにまとめてみましたが皆様のお役に立てたでしょうか?少しでも業界から「有害物質」を除去し、野球愛好家のあなたの心の健康に役立てたらこんなにうれしいことはありません。
グローブの「型」の説明をしてきましたが、考えてみればこのこだわりが我が「サクライグループの型」と言えるのかもしれません。どの企業にも長い年月をかけて培われてきたものがあり、それがいつのまにか「型」として出来上がっている。世界中の野球グローブを作りつづけて50年。色々なことがあり、色々な意見を聞き、それこそ色々な野球グローブがありました。その中から厳選され「やはりこうあるべき」というものが自然に出てきて、その積み重ねが「企業の型」を作り「グローブの型」にも反映される。少しまじめすぎたかな?と思うこともありますが、この「型」が私の体に染み付いているので、いまさら変えるわけにはいきません。こんな「型」ですが、あなたの「型」と相通じるものがあったでしょうか?もしあればまた次回もお付き合いください。グローブについての話はつきませんので。
まだ竹林講座第1回目を受講されていない方は

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